リンチの現場を見物していていいのかね?

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それほど難しいことでもないし、非常識なことを書いたつもりもなかったのだが……。
ヘイトスピーチは犯罪である。犯罪者を見つけたら現行犯で逮捕しよう。 - 訳者あとがきβ版


箇条書きにするので、もう一度よく考えてみよう。


ヘイトスピーチは悪である。マイノリティーに対するリンチである。これは自明。(そう思わない人は、ここから先は読まなくていいです。)
それがどれほど深刻な傷を被害者に負わせるかは、たとえばid:lmnopqrstu氏の4月11日在特会デモという暴力についてを参照(必読!)。


・では、なぜ日本の国家権力・警察は、ヘイトスピーチを野放しにしているのか。取り締まる法がないから。


ヘイトスピーチ禁止法がないのは、しかたないことなのか。いや、すでに前エントリーの注であげているように、ニュルンベルク裁判の前例があるし、ヘイトスピーチを禁止する法を制定している国は世界にいくつもある。国際人権規約も、明白にヘイトスピーチを禁止している*1


・したがって、ヘイトスピーチを禁止する国内法がないのは、立法府サボタージュ、あるいは悪意による黙認でしかない。あとは技術的な問題だけ。


ここまではいいですか? 差別を憎み、youtubeで「国民大行進」のビデオを見物しながら在特会の頭の悪さをバカにする、良識ある日本国民のみなさん!


・では、ヘイトスピーチ禁止法を制定するために、運動しましょう! 声を集めましょう! メデタシメデタシ(いつ国会を通るかわからんけど……)。


ちょっと待った!


法が制定されるまで、ヘイトスピーチは垂れ流しでもいいの? いま、この場で、ヘイトスピーチによって“のり子さん”たちが傷つくのを、放置していていいの? その人たちにとって、人生は一回しかないのだよ。いったん傷つけられたら、その傷は回復不能なのだよ。在特会をバカにしたって、傷ついた側にとっては何の慰めにもならないのだよ。(それでもいい、という人は、ここから先は読まなくていいです。)


・となると、結論はひとつ。法ができるまでは、ヘイトスピーチを人民の実力で阻止するしかない。それを私は「現行犯逮捕」という言葉で表現した。もちろん、現行法によらずに逮捕したらそれは犯罪であるし、“犯人”をブタ箱にぶちこんでおくわけにもいかない。できることは、せいぜい差別表現が書いてある横断幕を取り上げるか、ぶんなぐるくらいのことだろう。(他に方法があるなら、教えてほしいんですが。いや、マジで。)


・それでも、ここで「現行犯逮捕」という言葉を使ったのは、蕨市での行動で逮捕された2人は、本来なら国の仕事であるべきヘイトスピーチの取り締まりを、国のサボタージュのせいで、代わりにやらざるをえなかっただけだ、ということを強調したかったから。ヘイトスピーチ禁止法があれば、一般市民による現行犯逮捕は違法でもなんでもない。いや、むしろ埼玉県警から表彰されてもおかしくない。(ここは単なるネタだから、ツッコミ禁止。逮捕された2人も警察から表彰なんて望んでないだろうし、私も断る。)


・もう一つ、id:CrowClaw氏が、“「犯罪者」を悪人呼ばわりするなら反動右翼と同じ。「敵」の言葉で会話してどうする?”というブコメを寄せていたけど、それは犯罪(crime)の定義の問題なんじゃないでしょうかね。もし日本でマイノリティーに対するジェノサイドが起きたとしたら、それを扇動した人間は人道に対する罪(crime against humanity)で犯罪者として逮捕し、裁くべきだと思うが。むしろ在特会や警察の側が「犯罪」という言葉を、入管法違反などというチンケな形式犯*2に対して恣意的に使っていることが問題ではないの?



つまり、一言で言うと、こういうこと。


いま、目の前で、マイノリティーに対するリンチが行われようとしているときに、法律がないからといって、そのリンチが行われるのを止めなくていいんですかね? みなさん。



<追記>
ブコメを読んでいて、当事者意識と緊張感のない、無責任な発言の羅列に、正直あきれてしまった(ウヨの皆さんはハナから対象外ですから、読まなくていいです)。これは、日本社会(というより、「我々日本人の存在そのもの」と言った方が適切だろう)が在日朝鮮人をはじめとする「外国人」に対して日常的に、毎日24時間、1年365日、構造的な暴力として作用しているという事実を理解していない日本人が多いからだろう。


既読の方も多かろうが、あらためて、次の在日朝鮮人による二つのエントリーを紹介しておく。ぜひ、全文に目を通して、“のり子さん”たちの傷の大きさとその回復不能性について想像していただきたい。


倫理の鏡 - パラム、ドル、ヨジャ〜済州島に多いものみっつ〜
それじゃ便乗して民族学校通ってた在日もちょっと書いてみるか。


こうした深刻な日常的暴力*3は構造的なものであって、「いい日本人もいる」「私はあんなバカウヨとは違います」と言うことで、その責任から逃れられるものではない(私自身も含めて)。


この「傷」について当事者に語らせること自体が、また一つの暴力でもあるのだが、私の非力さゆえ紹介させていただいた。ご了承願いたい。

*1:国際人権規約(B規約20条2項)「差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する。」

*2:つまり運転免許不携帯と同じレベル

*3:例えば、『私の前を歩いてる人がハンカチを落としたので、拾って「落としましたよ」と声をかけた時、「この人は笑ってありがとうと言ってくれたけど、もし私が朝鮮人だと知ったらどんな顔をするんだろう」とか考えちゃう』ことの、足下が崩れるような恐ろしさを、どうしたら我々は理解できるのだろうか

ヘイトスピーチは犯罪である。犯罪者を見つけたら現行犯で逮捕しよう。

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ヘイトスピーチは犯罪である。


たまたま、それが日本の刑法に記されていなくても、外国人などのマイノリティーを差別し、恐怖におとしいれ、生存権を奪い、追放することを正当化するような言動は、犯罪である*1
このことは、当ブログを読んでいるみなさんなら、説明するまでもない自明のことだろう。


では、ヘイトスピーチが目の前で行われようとしているとき、我々はそれを指をくわえて見ていていいのか。「平和的に」ヘイトスピーチ反対の声を上げているだけでいいのか。


否!



目の前でこのような重大な犯罪が行われているとき、全力でそれを阻止するのは、我々の責務である。それが日本の法律で犯罪とされていないのは、単に国家が怠慢であるか、ヘイトスピーチを内心で支持しているからである。だから、無能な警察権力にかわって犯罪者を逮捕するのは当然の市民的権利であり、日本国民の義務である*2


ところが、埼玉県の蕨(わらび)市でおこなわれたヘイトスピーチ反対行動で、我々の仲間が2人逮捕された。犯罪を阻止しようとして、逆に警察に逮捕されたのだ。

どようびに わらび市に いきました - やねごんの日記

「外国人追い出しデモ反対行動」救援会 声明文



誰が正義なのか。犯罪を阻止しようとした我々である。

誰が不正義なのか。犯罪を黙認し、助長している日本国家と警察権力である。




今回の行動で逮捕者を出したことで、さまざまな意見が飛び交っている。右翼・反動勢力からの声は、そもそも気にする必要はない。

しかし、残念ながら、ヘイトスピーチに反対する側からも、「やり方がまずかった」等の声が挙がっている。私自身も一時、そうした声に流されそうになったことを、ここで自己批判したい。



もう一度言おう。ヘイトスピーチは犯罪である。現行犯を見つけたら、それを実力で阻止するのは正義であり、当然の行為である。非難されるべきは、ヘイトスピーチを行なう右翼・排外主義者であり、それを容認し助長する日本国家・警察である。



ヘイトスピーチは犯罪だ! 犯罪者の在特会一派を逮捕せよ!


犯罪を阻止するために逮捕された2人は、正義を行った勇気ある者たちだ! 我々の仲間をただちに釈放せよ!


<参考>
外国人排斥デモに反対する緊急行動のお知らせ - 訳者あとがきβ版
4月11日在特会デモという暴力について - lmnopqrstuの日記
外国人排除デモを排除します - media debugger


<追記>
ブコメへのお答えを、新エントリーで書きました。
http://d.hatena.ne.jp/mujige/20090502/1241252962

*1:たとえばナチス政権下のドイツで、反ユダヤ新聞『シュテュルマー』の発行人をつとめたユリウス・シュトライヒャーは、ニュルンベルク裁判でユダヤ人迫害を煽動した罪で死刑判決を受けた。

*2:ブルジョア憲法である日本国憲法でさえ、前文で次のように宣言している。「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。……日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」

「あなた沖縄の人なんですか?」――マイノリティーに たいする そぼくな しつもんの ぼうりょくせい について。


 
はてなハイク天皇はいらない!という キーワードでの ぎろんで わたしが 「皇民化教育(こうみんか きょういく)」という ことばを つかったところ ぎろんの さんかしゃの ひとりから こんな しつもんを うけた。

あなた沖縄の人なんですか?
コウミンカきょういく などという ことばを つかう ちいきが ほかに おもいつかなかったから。

その しつもんに たいして わたしは つぎのように こたえた。(ここに てんさいするに あたって たしょう ないようを つけくわえた。)
ハイクでは どんどん ながれていって しまうので じぶんの おぼえの ためにも ダイアリーに はりつけて おくことにする。
 
…………
 
「こうみんか きょういく(皇民化教育)」という ことばは にほんの しょくみんち せいさく(政策)に かんれんする わりと いっぱんてきな れきしようご です。クグれば おわかりに なると おもいます。
 
「あなた おきなわの ひとなんですか?」という しつもんは おおきな もんだいを はらんでいると わたしは かんがえます。まず この しつもんを する ひとの こころには 「わたしは にほん ほんどの ひと(やまとんちゅー)です」という じこ にんしき(自己認識)が あると おもわれます。
 
ならば、なぜ 「わたしは にほん ほんどの ひと(やまとんちゅー)ですが」と まえおき しないで すむのでしょうか。
 
たとえば もし おきなわで いきなり 「あなた沖縄の人なんですか?」と しつもんを したら、「ふらーじゃないかー?(バカじゃないの?)」と おもわれる ことでしょう。おきなわに いる ひとの たいはんが うちなーんちゅだからです。
 
つまり この しつもんを した ひとは この 「はてなハイク」という ばしょの マジョリティーが にほん ほんどの ひと(やまとんちゅー)である という にんしきを もっている ことが わかります。
  
もうすこし いうと、「あなた沖縄の人なんですか?」という しつもんは この「はてなハイク」という ばしょが にほん ほんどの ひと(やまとんちゅー)の ホームグラウンドである ということを しゅちょう(主張)している わけです。しつもんしゃが いしきしているか どうかに かかわらず。
 
したがって ここで はっせられた 「あなた沖縄の人なんですか?」という しつもん じたいが マジョリティーと マイノリティーの けんりょく かんけいに もとづいた ぼうりょくてきな ものであるわけです。
 
これを ほかの マジョリティーと マイノリティーの かんけいに おきかえて いろいろ しつもんを かんがえると さらに このことは よく わかると おもいます。
 
「あなた ゲイなんですか?」
「あなた ちょうせんじんなんですか?」
「あなた みみが きこえないんですか?」
「あなた めが みえないんですか?」
 
これらの しつもんが つねに さべつてきな さようを もつとは かぎらないかも しれませんが、 じぶんが マジョリティー(わたしの ばあいは おとこで ヘテロセクシュアルで にほんじんで 「けんじょうしゃ(健常者)」etc.)で ある ことの たちばせい(立場性)は つねに わすれないように しておきたい ものです。
 
…………
 
マイノリティーに たいする そぼくな しつもんの ぼうりょくせいに ついては、つぎの エントリーが ひじょうに さんこうに なりました。
証明問題 - パラム、ドル、ヨジャ〜済州島に多いものみっつ〜
押して、押して、押し倒されろ! 「異性愛者」へ12の質問
 
この ぶんしょうを 漢字(かんじ)を できるだけ つかわずに わかちがきで かいている りゆうは はてなハイクに かいた つぎの ぶんしょうを ごさんしょうください。
http://h.hatena.ne.jp/mujige/9236549274502110123

【緊急】外国人排斥デモに反対する緊急行動のお知らせ

友人から次のような呼びかけがありました。ご都合の付く方は、ぜひお願いします。

                                                                                                                                  • -

「生きることは犯罪じゃない」 in わらび行動

日時:4月11日(土)13時
場所:JR京浜東北線「蕨」駅西口「TSUTAYA」前集合
主催:外国人排除デモに反対する会

4月11日、埼玉県の蕨(わらび)でとんでもない悪質なデモが行われます。
デモの主催者たちは、最近、よくメディアで報道されているフィリピン人カルデロン親子を例に上げ、外国人は犯罪者と言いふらしています。
http://www.zaitokukai.com/modules/news/article.php?storyid=221

カルデロン親子は、法務省の残酷な決定により、娘ののりこちゃんは1人日本に残れますが、両親はフィリピンにやむなく帰国することが決定しています。
それでも彼らは「怒りがおさまらない」などと勝手に言い放ち、カルデロン親子や、多くの外国人が住む蕨で、外国人排斥の声を挙げると言うのです。
また信じられないことに、のりこちゃんの通っていた小学校、そして現在通っている中学校の前をわざわざデモコースに入れているのです。

外国人だからといって差別せず、様々な人々とともに助け合って生きていくことこそが、私たちの未来をつくっていきます。
それを逆行させるような卑劣なデモは許せません。みんなで怒りの声を上げましょう。
(※できればバナーを1人1枚持参してください。布または紙)

参考サイト:「カルデロン・アラン・クルズ一家に在留特別許可を!」
http://blog.goo.ne.jp/izumibashilaw?sess=186e17f8bf7fc1fa818a0f20f40cae48


<追記1>id:niagara2001さんのご指摘を受けて、「転送・転載歓迎」という部分を削除しました。<追記2>せと弘幸Blog『日本よ何処へ』にこの行動について書かれていました。
http://blog.livedoor.jp/the_radical_right/archives/52212592.html
それにしても、このブログの内容ひどすぎる。
「この蕨市にはまったく遵法精神というものがありません」「このような市は勝手に滅んでしまえば良いと思います」などと言いたい放題です。
蕨市民よ、怒れ!

人工衛星「光明星2号」の打ち上げと日本の朝鮮蔑視感情

朝鮮が人工衛星の打ち上げに成功したと、朝鮮中央通信の報道を引用する形で、朝鮮新報が速報した。


人工衛星「光明星2号」の打ち上げ成功 朝鮮中央通信社報道

 「銀河−2号」は2009年4月5日、11時20分に咸鏡北道花台郡にある東海衛星発射場から発射され、9分2秒後の11時29分2秒に「光明星2号」を軌道に正確に進入させた。


 「光明星2号」は40.6°の軌道傾斜角で、地球から最も近い距離で490㎞、最も遠い距離で1426㎞の楕円軌道を回っており、周期は104分12秒である。


 試験通信衛星である「光明星2号」には必要な測定機材と通信機材が設置されている。


 衛星は自らの軌道を正常に周回している。


 現在、衛星からは「金日成将軍の歌」および「金正日将軍の歌」のメロディーと各種測定資料が470MHzの周波数で地球上に電送されており、衛星を利用したUHF周波数帯域での中継通信が行われている。


日本政府と日本の主要メディアは、いまだに「飛翔体」「ミサイル」などの用語を使い、これが人工衛星の打ち上げであることを認めていない。さらに先ほどNHKニュースを見ていたら、街の人々にインタビューする形で「北朝鮮は何をやるかわからない」「怖いですね」などと、朝鮮に対する偏見を垂れ流している。メディア自身がそうした偏見をつくり出しているのに……。


しかし、中国・ロシアはもちろん、韓国やアメリカも、今回の朝鮮のロケット発射を、人工衛星打ち上げだと認めている。また、日本政府は安保理での非難決議を目指しているが、朝鮮の人工衛星打ち上げだけを非難することが道義上、許されないことは、朝鮮側の見解どおりだろう。


二重基準は許されない 労働新聞3月29日付

 国連安保理がこの問題を取り扱おうとするなら、公平にすべての国の衛星打ち上げを問題視するのが当然である。ここで2重性と偏見があっては絶対ならない。


 世界的に9つほどの国が現在まで数千基の衛星を打ち上げたが、安保理に持ち込まれて問題視されたことは一度もない。このような前例を持つ安保理が、われわれの衛星打ち上げに対してだけ問題視できるというのか。


この朝鮮に対する日本のダブルスタンダードを見事に暴露しているのが、来月に予定されているという、韓国の人工衛星打ち上げだ。


辺真一氏は自身のブログでこう述べている。

韓国のはOKで、北のロケットはNO!

 北朝鮮人工衛星がなぜ、問題なのか、打ち上げてはならないのかについて日本政府は「人工衛星であっても、打ち上げる発射推進体がミサイルと技術的に同じで、ミサイルへの軍事転用が可能だから」「弾頭に核弾頭を装着すれば、大陸弾道ミサイルになるから」と説明している。日本国民向けなら、これ以上の説明はいらない。しかし、常識的に考えると、そうだとするならば、これは何も北朝鮮に限った話しではない。ロケットイコールミサイルという捉え方をするならば、日本のロケットも、また来月発射を予定している韓国の人工衛星も問題になってくる。


 例えば、韓国は来月に自前の小型衛星発射体(上記の写真=模型)を使って科学技術衛星2号を宇宙に打ち上げる予定になっている。発射場所は日本に最も近い韓国最南端、全羅南道高興の羅老からだ。韓国初の衛星実験である。


 韓国のロケットは九州と沖縄の間を飛んでくるが、北朝鮮のミサイル同様にトラブルが発生すれば、軌道を外れて鹿児島など日本列島あるいは日本の領海に落下するかもしれない。過去に経験したことのある北朝鮮と違って、韓国は「初体験」である。日本にとってのリスクという点では北朝鮮のそれよりも韓国のほうが高い。それでも日本には迎撃の動きはない。どうしてだろうか?


辺真一氏は、「韓国のそれはOKで、北朝鮮のそれはNOというのは、ダブルスタンダードのような気がしてならない。」と控えめに書いているが、ダブルスタンダードそのものである。


このような偏見と敵意に満ちた報道に煽られる形で、すでに右翼が朝鮮総聯の各施設に脅迫を加えているという情報もある。


朝鮮新報コラム「春夏秋冬」

問題は、06年の核実験成功の際と同様、今後の日本の対応だ。すでに右翼勢力は総聯の各機関に対する脅迫などを行っており、朝鮮学校の生徒に対する嫌がらせや暴行がいつまた起こるとも限らない。同じ過ちを繰り返すだけ袋小路に迷い込むということを肝に銘じるべきだ。


折悪しく、朝鮮学校はちょうど入学式を終え、新学期が始まる時期だ。各朝鮮学校の関係者は、子どもたちを日本人による暴行から守るために、対策に追われている。


朝鮮人として胸を張って朝鮮学校の門をくぐる子どもたちが、安心して勉強や遊びに励めるような社会を、私たち日本人は作っていくべきではないか。それが朝鮮を植民地として、朝鮮人から名前を、言葉を、財産を、誇りを、命を奪った日本人としての、まっとうな責任の取り方ではないか。


最後に、mujigeの資料庫から、98年の光明星1号(日本では「テポドン」と呼ばれている)打ち上げに際して書いた記事の一部を、やや長くなるが、抜粋しておく。特に引用部分の森崎和江の言葉は、何度も噛みしめておきたい。


それにしても、あれから10年たっても、日本の状況がまったく変わっていない(というより、悪化している)ことに愕然とするしかない。


ルールと差別----あるいは、人工衛星と金嬉老事件。

第三に、今回の騒ぎの裏には、日本人の朝鮮蔑視があります。


まず、9月5日の朝日新聞の社説から、一部を引用します。

 

国際協調による関与こそ 北朝鮮政策


この隣国と、いったいどうやって付き合っていったらいいのだろう。


朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮)による新型ミサイルの発射実験をきっかけに、多くの日本人が、あらためて考え込んでしまったに違いない。


「我々の自主権に属する」「日本がせん越に口出しする性格の問題ではない」。北朝鮮当局の声明は、実験をそう論評した。日本政府の抗議や衆参両院の決議を無視し、あえて日本人の感情を逆なでするかのような姿勢である。(中略)


北朝鮮人工衛星だったとしている。にわかには信じがたいが、かりにそうだとしても、軍事的な危険性に変わりはない。


日本がしなければならないことは、まずミサイルの開発、実験、配備、輸出に対する抗議の意思を、あらゆる機会と場所をとらえて北朝鮮に伝えることだ。


政府は、日朝国交正常化交渉の再開と、食糧支援、北朝鮮に対する軽水炉の提供事業への協力を、当面凍結することを決めた。平壌と名古屋の間のチャーター便の運航も認めないこととした。


北朝鮮に日本の強い意思を示し、真剣な対応を迫るには、妥当な措置である。日本の安全や地域の平和を脅かすような行動が、経済的に割にあわない結果となることを、具体策で示すことが必要だ。


次は、中国の人工衛星打ち上げを論じた、70年4月27日の朝日の社説(抜粋)です。

中国の人工衛星成功に寄せて


中国が人工衛星を軌道にのせ、世界で五番目の衛星打ち上げ国になった。(中略)


七〇年代は、米ソ以外の多くの国が宇宙開発の分野に進出する年代である。当然各国ともそれぞれ独自の宇宙開発計画を持っているだろう。領土の広い中国では通信衛星のような実用衛星の役割を相当重視していることも推測にかたくない。


今回の衛星は、そうした「宇宙技術開発の順調な始まり」と見るべきであり、中国が宇宙開発のような科学技術の重要分野で多くの工業諸国に先がけて実績をあげたことには、敬意と祝意を表したい。(中略)


たしかに、平和利用の技術は密接に軍事技術と結びついている。今回の打ち上げも、軍事的な能力に結び付けて考えないわけにいかないことは間違いない。(中略)


われわれは、こうした側面からのとらえ方にはそれなりの根拠があることは認めながらも、中国が今回の成果を平和利用分野での技術発展に生かしていくことを期待しないわけにはいかない。(後略)


この頃の朝日新聞は、明確な親中国路線をとっていたので、これだけでは扱いが不公平なのは当然だと思われるかも知れません。


しかし、例えば読売は「かなり以前から予想されていたことで、いまさらのように驚くことはあるまい」「中国の核の脅威を必要以上に強調して、客観的には中国を敵視することになる“力による対応策”へ国民を誘導することは、日本の安全と繁栄にとって危険な道であることを銘記しなければならない」(同年4月28日)、毎日も「冷静に考えれば…中国が米ソの核基地をたたくだけの第一撃能力体系を持ちうるとは思われない」「いたずらな感情論や観念論に基づく論議は、決して国民の願望する本当の安全保障をもたらすものではない」と、今回のケースとは違い、日本への脅威論をあおったり、制裁を主張することなく、理性的な反応を見せています。


中国のロケットが日本上空を飛び越えなかったから? でも、この時の中国はすでに核実験に成功しており、日本全域が中国の核ミサイルの射程に入ったという意味では、その軍事的意味は朝鮮の衛星どころではありません。当時中国は、日本と国交はなかったし(日本政府の言い分では「中国共産党が不法に支配」していたわけですね)、国連にも代表権はありませんでした。


もちろん発射の事前通告はありませんでした。各紙が強調する日本の安全保障の側面から見れば、どちらが現実的脅威かは明白でしょう。


さらに最近の例でいえば、中国が台湾付近にミサイルを打ち込んだとき、沖縄の漁民は何日間も出漁を見合わせなければならず、日本人の実生活には「テポドン」とは比べものにならないほどの影響がありました。にも関わらず、中華学校の生徒が襲われたとかいう話は、まったくありません。


こうやってさまざまな角度から検討すると、やはり今回の日本の反応は、たとえそれが国際ルールに反し、危険を伴うものであったとしても、尋常ではないことがお分かりになると思います。


大国へのおもねり、小国への蔑視、朝鮮支配の未清算、本土重視と沖縄差別…。「テポドン」騒ぎは、日本社会に蔓延する矛盾が絡み合って噴き出した日本人自身の問題でもあることを見つめなければ、何度でも形を変えて繰り返されることでしょう。


***


この投稿を書いていて再び思い起こされたのが、#5215でも紹介した森崎和江『二つのことば・二つのこころ』の、次のような一節です。森崎は金嬉老事件によせて、「私は人質の位置にいた」と前提した上で、こう書いています。

それは、日本人は誰でも、あるとき、ふいに個人的な理由なしに、朝鮮人によって人質とされて、なんのふしぎもないといいたいためだ。しばしばそうなるであろうことを指摘しておきたいからだ。人質とは、朝鮮人の主体性にとりおさえられる状態である。けれどもまた、朝鮮人の主体性に対して、まともに対応する自由----つまり生命の危機感とひきかえに自己の朝鮮を掘り起こす自由----を確保する。


日本人は犯罪の有無にかかわらず、人質として日本人が朝鮮人の主体性にとりおさえられることを、ふつごうだと考える。それは日本の大衆にとって、ごく自然な発想である。そしてまた日本の支配意識も、さようなことはふつごうだと考えるが、それはいささか不自然な反応である。その意識は反応の立脚点を心さわがしく探さねばならない。


ではもし、中国人が日本人大衆を人質にしたらどうだろう。朝鮮と中国は、ともに日本国が侵略の対象とした相手である。が大衆の両者に対する感情にはかなりの差があるのだ。


私は朝鮮語の本を時折電車のなかで開くことがある。……或るとき誰かが声をかけた。「なぜ朝鮮語の勉強をなさるのですか。どうせやるなら中国語がよくはありませんか」この反応は大衆の気持ちをよくあらわしている。もしこれら大衆が中国人の手で人質になったなら、やはり不都合なことだと大衆一般は反応するだろうか。


金嬉老の孤独な戦いから、30年の歳月が流れました。金嬉老はいまも無期懲役囚として獄中にあり、オモニは11月4日、息子の出獄を待つことなく、亡くなりました。


金嬉老事件と朝鮮の衛星打ち上げは、もちろん全然関係のない、別々の出来事です。しかし、30年の時を隔てたこれら二つの出来事に接したときに、日本人の心にわき起こった感情が、全然別種のものだとも、私にはどうしても思えないのです。


朝鮮人の主体性に対して、まともに対応する自由」を、いまだに日本人は確保できていないことが、再び露呈してしまったのではないか。それゆえに金嬉老はいまも日本の最長期囚として獄にあらねばならないのではないか。


政治家とマスコミが騒げば騒ぐほど、そんな苦い思いがこみ上げてくるのです。


(注)金嬉老氏は1999年9月7日、一度も見たことのない“祖国”、韓国に「帰国」することを条件に、仮釈放された。事件から31年目のことだ。


<追記>2009/04/06

この記事のアップ後、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)は人工衛星打ち上げ失敗との見方を発表しました。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090405-00000110-jij-int
それを受けて、タイトルを一部変更しました。元のタイトルは『人工衛星光明星2号」の打ち上げ成功と日本の朝鮮蔑視感情』です。

「朝鮮人になりたい」

   

<まえおき>
Arisan氏の自己批判を批判する - lmnopqrstuの日記を読んで、その論理構成の緻密さに感心するとともに、日本人の心にいまも残る植民者根性、朝鮮人に対する優越意識にあらためて気づかされた。

同時に、5年前にハンクネット・ジャパン(朝鮮人道支援ネットワーク・ジャパン) *1の一員として訪朝した際に同会の会報に掲載した自分のエッセイのことを思い出した。

この機会に再掲しておきたい。

朝鮮人になりたい」−2004年ハンクネット(朝鮮人道支援ネットワーク)訪朝記


今回の訪朝(04年10月7日〜16日)も、いろいろな人に出会い、さまざまな話を交わした。


前回は飛行機の旅だったが、今回は初めて万景峰(マンギョンボン)92号での訪朝となった。一泊二日の航海は穏やかで、かつ意義深いものだった。


祖国への修学旅行に向かう朝鮮学校の子どもたちは、楽しい歌声を披露してくれたし、船内の喫茶室のコーヒーは注文してから一杯ずつ入れてくれる本格派で、おいしかった。食事の後の歓迎宴で、その喫茶室の女性があでやかなチマ・チョゴリ姿で出演して歌い出したのには驚いた。あまりに素晴らしい歌声だったので、後で喫茶室に寄って聞いてみると、音大の声楽家を出たのだという。


また、朝鮮で農機具製造工場を運営する在日朝鮮人の経営者からも、興味深い話を聞くことができた。最近の経済改革によって、工場が独自で農機具の部品を買い入れることができるようになり、各地の農村を巡回しては、故障したトラクターや農機具を修理し、喜ばれているという。


船の旅は費用も安く、体が楽だ。何と言っても、第三国を経由する煩雑さがないことがありがたい。朝鮮総聯の引率もあり、乗船と下船の際は若者たちが大量の荷物の積み卸しを手伝ってもくれる。いっしょに乗船した一世らしきおばあさんを見ながら、もし経済制裁で船の行き来がなくなったら、このおばあさんは二度と朝鮮の地を踏み、血縁に会うことはかなわないのではないか、そんなことを考えた。*2


元山(ウォンサン)では、水害対策委員会の関係者に会い、WFPがいかに厳格なモニタリングをしているか、その実態も詳しく(半ば愚痴混じりに)聞くことができた。米が配給された家庭に毎日職員が訪れ、一日でどれくらい米が減ったかを調べるのだという。


平壌ピョンヤン)では最近建てられた統一通り市場を覗かせてもらった。コメ、トウモロコシ、野菜などだけでなく、バナナなどの果物、衣類や電化製品まで、山と積まれた商品の間を、多くの買い物客がごったがえしている。韓国の南大門市場と比べてすっきりと整理されているところが、中央アジア諸国の市場を連想させた。


また、リサイクルされたWFPの袋に穀物を入れて堂々と並べているのを発見して、思わず笑ってしまった。「支援横流し」の“証拠”を隠し撮りした人間も、朝鮮では袋が貴重品として再利用されていることくらい知っていたのではないか。私たちも「隠し撮り」した映像をテレビ局に売れば、一儲けできたかも知れない。*3


もちろん、私たちの直接のパートナーである平壌育児院の子どもたちとの出会いは、前回のニュースで竹本代表が報告したように、うれしく、自分たちの活動が正しいものであることを確信させてくれた。院長はじめ関係者は、二日間に渡るわたしたちのしつこい聞き取り調査にも、丁寧に答えてくれた。あらためて感謝を述べたい。


それらの意義深い出会いのなかでも、最も強烈に私の記憶に残ったのは、元山の幼稚園でのワンシーンだ。同行した写真家の伊藤孝司さんが、子どもたちにレンズを向けながらこう質問した。
「大きくなったら何になりたいの?」


すると、一人の男の子が、ちょっと緊張した顔でこう答えた。


チョソンサラム(朝鮮人)になりたいです」


「立派な」とか「偉大な」とかいう形容詞抜きの、ただの「朝鮮人」。
その一言に、私はこの民族が歩んできた100年間の苦難を思い浮かべ、めまいを感じた。


日本人は、自分が日本人であることに何の疑問も持たない。生まれたときから、そして先祖代々、日本人であることが当たり前だと思っている。だから、日本人の子どもから「日本人になりたいです」という答えが返ってくることはありえない。


だが、朝鮮人は違う。国を、国籍を、言葉を奪われた朝鮮人は、朝鮮人であるために、命を懸ける必要があったのだ。


義兵闘争、3・1独立運動抗日パルチザン朝鮮戦争。何千、何万という朝鮮人が、朝鮮人であろうとしたがゆえに、倒れていった。日本においても、朝鮮人を育てる学校を守ろうとして、多くの人が投獄され、血を流した。


元山の男の子の「朝鮮人になりたい」という一言には、1910年に強制的に「日本人」にさせられて以来、朝鮮人朝鮮人になるために歩んできた、歴史が込められているように思う。


いまでも、朝鮮人が朝鮮の主人であることは、当たり前に保障されているものではない。国際関係の危ういバランスと、日々の闘いのなかで、ようやく保たれているのだ。


(2005年)3月1日の演説で韓国の盧武鉉ノ・ムヒョン)大統領はこう語っている。


「わたしは拉致問題による日本国民の憤怒を十分に理解する。同様に日本も逆の立場に立って考えなければならない。強制徴用から従軍慰安婦問題に至るまで、日帝支配36年の間の数千、数万倍の苦痛を受けたわれわれ国民の憤怒を理解しなければならない」*4


それに対して、朝日新聞は翌日の社説で冷たく反論した。


「植民地支配という歴史と北朝鮮による拉致は同じ次元の問題ではない。北朝鮮の対日非難に通ずるかのような物言いは、日韓関係にとって逆効果だ。……交渉の進展を妨げているのはむしろ北朝鮮である」


しかし、日本の植民地支配がもたらした被害は、朝鮮半島の北と南を問わない。すべての朝鮮人が被害者だったのだ。拉致も、南北の分断と緊張という背景のうえで起きた問題だ。朝日新聞の社説に代表される日本側の態度は、歴史に対する無知と無恥に基づくものに他ならない。


盧武鉉大統領の言葉は、「朝鮮人になりたい!」という元山の男の子の叫びを、そのまま言い換えたものなのだから。

                           

*1:ウェブサイト上はまだ旧称の「北朝鮮人道支援ネットワーク」と表示されているが、昨年末に「朝鮮人道支援ネットワーク」と改称した。

*2:現在は周知の通り、日本の対朝鮮経済制裁によって万景峰92号の運行はストップしている。

*3:RENK(救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク)が市場で隠し撮りしたWFPの袋の写真を「支援横流しの証拠」として発表し、一部メディアがこれを報道した。WFPは横流しの事実を否定している。参考:穀物袋を巡っての騒ぎ(ハンクネットのサイトから)

*4:参考:俵義文氏のホームページ

【転載】朝鮮の人工衛星を利用した日本政府の好戦的政策をやめさせよう!

平和を愛し、差別を憎む方はご協力お願いします。

※ただし、朝鮮政府に「人工衛星発射の中止を求めること」には私は反対ですので、その部分はカットして日本政府に要請するつもりです。朝鮮にも当然、宇宙の平和利用の権利があります。


岡山の片山貴夫さんのブログから転載。
http://katayamatakao.blog100.fc2.com/blog-entry-33.html

以下、転載歓迎---------------

朝鮮の人工衛星を利用した日本政府の好戦的政策をやめさせよう!

                     2009年3月24日

 対話で平和を!日朝関係を考える神戸ネットワーク
 問合せ先  dfadl300@kcc.zaq.ne.jp  


平和を愛するみなさん!現在日本政府は、朝鮮の人工衛星打ちあげを理由にMDシステムにもとづく迎撃という前代未聞の好戦的な政策をとろうとしています。
東北アジアの平和のために、以下の要請項目や意見を首相官邸や外務省に要請されることをよびかけます。


(政府への要請項目)
(1) 朝鮮の人工衛星に対する迎撃態勢をとらないこと。あくまでも外交努力によって朝鮮政府に人工衛星発射の中止を求めること。
(2) 人工衛星発射を理由に、朝鮮への全面的な禁輸措置などの経済制裁を強化しないこと。4月13日に期限が切れる朝鮮への経済制裁を延長しないこと。
(3) 在日コリアン団体の口座凍結などの人権侵害政策をおこなわないこと。


名前(         )
所属(                    )


要請先・首相官邸
 http://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html

・FAX 麻生太郎首相 国会事務所 03-3501-7528

・外務省ご意見・ご感想コーナー
http://www3.mofa.go.jp/mofaj/mail/qa.html

・FAX 外務省北東アジア課 03−5501−8257



(要請趣旨)

 報道によれば浜田防衛相は3月20日、4月上旬に予定されている朝鮮民主主義人民共和国(以下朝鮮と略)の人工衛星が打ち上げ失敗で日本に落下する場合に備え、自衛隊法82条の2に基づく「弾道ミサイル等破壊措置命令」を3月中にも発令する考えを明らかにしました。麻生首相もたびたび迎撃態勢をとる意向を明らかにしています。さらに日本政府は、人工衛星うちあげを契機に、朝鮮にたいする輸出の全面的な禁止などの経済制裁の強化や、在日コリアン団体の口座凍結などの人権侵害措置すら検討しています。一連の措置は、東北アジアの緊張を激化させ、日朝間の諸問題の解決をも遠ざける暴挙です。
 
 ミサイル防衛(MD)システムはまだ実験段階であり、あらかじめ軌道がわかっている目標の迎撃すら失敗しているシステムです。軌道のわからない他国の人工衛星を撃ち落とす確率は極めて低く、政府内部からも「ピストルの弾をピストルで撃ち落とせるはずがない」という意見が出るほどです。その一方で確実なのは、迎撃態勢をとること自身が朝鮮への軍事的威嚇となることです。そもそもMDシステムは、アメリカの進める宇宙軍拡の一環であり、アメリカが公言する「先制攻撃態勢」をより強化するものだからです。東欧ではロシアが猛反発し、ヨーロッパ市民の反対運動によってチエコへの配備計画がとん挫しています。
 
 一方東北アジアではすでに、海上発射型の巡航ミサイルだけで500発以上を朝鮮に先制攻撃できる体制を日米韓3国は作っています。この間の朝鮮政府の対応から、日本が強硬策をとればなおさら朝鮮政府は強硬策をとり、日朝間の軍事的対立がエスカレートするでしょう。だからこそ、中国の国会議長は3 月20日、浜田防衛相に冷静な対応を求めました。もちろん朝鮮の人工衛星打ち上げ自身が、東北アジアの緊張を高めることは明らかであり、日本政府はあくまでも外交手段によって朝鮮政府に打ち上げ断念をせまるべきです。このままでは、人工衛星打ち上げの万が一の失敗に備えるという行為が、東北アジアの緊張を一気に激化させることになります。
 
 また政府は、4月に予定されている朝鮮への経済制裁の期限切れに際して、
現在ぜいたく品に限定されている輸出の禁止措置を拡大しようとしています。すでに日本から朝鮮への輸出額は2005年の69億から2008年の8 億へと減少しています。一方で朝鮮は、中国韓国EUアメリカなどとの貿易を拡大しており、禁輸の効果はありません。日本の孤立化を招くだけです。
そして、政府が在日コリアン団体の資産を凍結する方針を検討していることも報じられました。朝鮮政府の意向とまったく関係のない在日コリアンの人権を侵害することは許されません。本国へ圧力をかけることを目的に在日外国人の人権を侵害する行為は、第2次世界大戦時の在米日本人の強制収容の例を引くまでもなく、恥ずべき人権侵害です。


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